極寒の地 ヴァトナヨークトル氷河 へ 前編の巻

Travel Abroad

ローマからフィレンツェを抜けてピサに向かったイタリアの旅から1ヶ月半ほど経った22年2月、アイスランドに向かいました。

アイスランドは、人類が自然に許された範囲で細々と暮らしているという表現にふさわしい土地でした。天候も予想がつかず、そして目まぐるしく変わります。着いた当初は「この厳しい土地に人間がどのようにひっついて暮らしているんだろう」それを見れるだけで満足して帰るはずでした。そう、ヴァトナヨークトル氷河にあるアイスケイブの存在を知らなければ、そうなっていたはずでした。

私たちは、何か知らない間に、この氷河の奥地に取り憑かれるように魅了され、もはや見なければならないと思うようになっていました。

ヴァトナヨークトル氷河は、首都のレイキャビクから、車で丸一日は運転しないとたどり着かないところにあります。私たちが1回目にアイスランドに訪れたときは、暴風雪に見舞われて、途中で行くのを断念し、ガイドと共に失意の中、引き返してきました。居ても立ってもいられず、仕事の休みと次への準備を整え、3月に再度、アイスランドに入り、この時にようやくアイスランドの奥地まで入ることを許されました。実際、この2回目も私たちが入る前日までは猛吹雪で、アイスケイブに近づけるような天候ではなかったので、ほんのちょっとした運の巡り合わせで、全てが変わってしまいます。

私は、このアイスランドの冬に何をみたのでしょうか。何に取り憑かれたのか?

永遠を思わせるような時を見たのか?人間を簡単に死に追いやる自然の圧倒的な力を見たのか?自然が持つ曲線的な美しさを見たのか?

私は、このアイスランドの土地で、自分の望む、光を見たのだと思います。それは文学的な表現でも何でもなく、本当に心底美しいと思う光は、エーゲ海や地中海を照らす、あの光の中に見るものと思い込んでいたところに、いや、ここではないか?と思ってしまったのです。そう、私はモロッコのような熱帯域で、その光を見つけたのではなく、この極寒の地で想像を超えた美しい光を見つけました。氷河の中に捕らえられ、散乱する光に、文字通り、言葉を失うほど美しい光を見ました(後編に続く)